突然ですが、
皆さんは橋下徹さんをご存じですね?
政治的なスタンスや思想の是非は置いておくとして、弁護士さんだけあって、テレビ番組のコメントやTwitterのつぶやきで舌鋒鋭く”敵”に切り込んでいく姿は切れ味があります。
「他の人が言えないことを簡潔に言ってくれる!」
というイメージがあるのか、政治家を引退されても人気は高いようです。
他の評論家やゲスト学者と異なり、机上の空論を述べるだけでなく、自ら行政を動かした当事者ですので、言葉に説得力があるのかもしれません。
さて、
なぜに橋下さんのことを話題に出したかといいますと、以前同氏が敵視される相手に対して、「コチンピラ」という表現を使っていたことが魁の記憶にあったからです。

今日お伝えしたい話に登場する「毒父親」がまさにその「コチンピラ」を想起させるわかりやすい人物だったので、連想したあのツイートについて冒頭で書きました。
※本来は、「小者なのに些細な理由で示威行為を行うもの」というような意味です。あなたの身の回りにいませんか??(weblioより)
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「先生」と呼ばれる貴方は、何のためにお子さんを指導するのか?を答えなさい。(一択)
という問いがあった場合、まともにこの業界にいる人間なら、一瞬何が正解なのか?を迷うのではないでしょうか。
相手にしているのはお子さん本人。
問い合わせしてくれて「契約」を交わしているのは保護者さん。
大抵はその二者が先行するとして、「自分自身のため」「過去を乗り越えるため」「日本の明日を創るため」など、時間をかけて考えれば考えるほど、一つに絞れというのは結構キツイ。
読者の皆さんは、何のために日々の「仕事」や「自らの役割」を行っていますか?
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私が耳にしたのは、一人の気骨ある「学生のアルバイト家庭教師」の勇気ある行動の話です。
その学生さんが担当しているお子さんが冬休み明けのテストでイマイチな得点を取ってしまったそうです。
そのお子さんの父親は、以前から荒っぽくイキった言動が目立つ人物(=以下、Mr.コチンピラ)で、学生さんからすれば内心ヒキ気味になってもおかしくない相手です。
ふだんの指導に行く際にはお子さんとお母さんにしか接しないのですが、イマイチなテストの後に、そのMr.が帰宅しており、お子さんに対して当たり散らし始めました。
バイトさんとしての勤務時間はとうに過ぎていたのですが、テストにかかわる話題だけに帰るに帰れず巻き込まれるようにして、その場にいることになってしまったそうです。
「テメーは勉強を舐めとるんじゃあ!!本気の10パーセントも出してねえから、こんな結果しかだせないんじゃあ!!」
本人もお母さんも、自分の感情に抑えが効かなくなったMr.コチンピラにはいつも黙るしかないようで、邪悪な台風が過ぎるのを待つようにジッと耐えています。

父として何らの理解も許容もなく、結果を見ての感情的な全否定。
家庭教師の学生さんは、あまりの大音声と剣幕に蒼白になって震えていたそうです。
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いつ終わるとも知れない罵詈雑言が途切れた時に、彼女が意見を言うべき間が訪れたそうです。
図体のでかい魁でも、「契約者」である保護者さんが間の前で喚き散らしていたら、相当混乱しますし、感情を全開にした人間は怖いです。
そのコチンピラの言葉がお子さんに向けられたものだとしても、指導している自分も同時に責められている心情になって、委縮します。
ましてや、彼女にとってはそういう程度のコチンピラなど、まともに相手をしたことがないような存在でしょう。
しかし、逃げたい気持ちを堪えて、彼女は言いました。
「お父様の言うことは正しくないです。もしかして理屈は正しいのかもしれませんが、勉強はゼロヒャク(=all or nothing。0か100かの二極)ではないです。そして、そんな言い方したら誰もやる気になんてならないと思います」
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魁が聞いたのは、伝聞の伝聞の伝聞くらいですので、そのやり取りの一部始終ではなく、その後のすべてはわかりませんが、彼女が無事にコチンピラ邸から帰宅したことは聞いています。
その場所に居合わせていないから、
「こういう人物に限って、根性論を言ってるんじゃない!って言うんだよね~」
「さぞかし人生をフルフル100パーセントで生きていらっしゃるのでしょうね・・・」
といったツッコミや混ぜ返しが思い浮かんできますが、目の前でガチギレしているコチンピラおっさんを見て、その言葉を誰が言えるでしょうか。
この学生の家庭教師さんは、「目の前のお子さんの味方でいよう」(お子さんのために指導にきている)という確固たるファイトがあったからこそ、敢然と立ち向かうことができたのです。
お子さんに甘くしたいということとは違います。
目の前でお子さんがやる気になり、努力している姿を見てきた。そして、その場で彼女が父親の勢いに飲まれてお子さんを責めていたら、お子さんが潰れてしまうのがわかった。
だから、ひと言分の勇気が出たのです。
誰にでもできる行動ではない。いや、魁も言えない。だから敬意を表したいのです。