突然ですが、
いわゆる「口コミ」について読者さんはどう考えていますでしょうか?
飲食店を探すなら「食べログ」さんのような評価の載っているwebサイト、はたまた塾であれば大手の塾さんが登録している「塾を案内するサイト」に思わず目が行きます。
Googleでも、各塾のホームページを見ると、「口コミ」というコーナーがあって、在塾生・卒塾生・体験生(この場合は、体験で不審に思いキャンセルした方がほとんど)から、その方が感じた本音が載っていますね。
私も思わず注目しています。
そして、web情報以上に気持ちが動くのが、
- 「学年1位のXくんはどこの塾に行ってるの??」
- 「あの塾の~~っていうベテランの先生がキャラが強くて面白いらしい」
- 「Aちゃんがいるから、あの塾は行かない!or 辞める!」
など、流動的で不確かな部分がある「知り合いから聞いた口コミ情報」です。
※webにしろ口コミ情報にしろ、あの塾この塾の内部の者が意図的な評価を書き込んだり、噂をまいたりといった工作が行われているケースが昨今報道されていますが、そういった特異なケースは今回扱いません。
より気持ちが動くのは、各種広告より実感が伴って感じられる情報だからか、あるいは発信するその人が自分だけに教えてくれている特別感があるからかもしれません。
さて、今回は「口コミで聴いた勉強法」について、保護者さんからご相談を受けたので、その時魁がお答えした内容についてお話しします。
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どのような相談だったかといいますと、、、
”息子の友だちで学年で1位をずっと取り続けている子がいて、私(=お母さん)その子に勉強法を聞いたんです。そしたら、
「特別なことはしていないよ?〇〇(学校の宿題用教材)だけやってる」
って教えてくれたんです。うちの子の指導の時に教材〇〇をメインで使ってみてもらえませんか??”
というものでした。
これはとても保護者さんの気持ちがよくわかるご相談でした。
すぐ近くにスイスイと学校の勉強に取り組んで、超好成績を収めている実例(友だち)がいる。
お母さんとしては「うちの子には、次のテストの時こそはもっと上を!!」と思えばこそ、その友だちからの情報が価値のあるものに思える!
そんな気持ちなのだろうというのが話していて伝わってきました。
その〇〇という教材は、ほとんどそのままテストに出題する学校の教諭もいるので、コピーなどして反復する人がいれば、得点につながりやすいのは間違いないです。
ですので、魁もテスト前3週間の段階から、テスト範囲として予想される締め切りに対してギアをかけて進ませますし、チェックもうるさく入れていきます。
(いわゆる上位校を目指す!!と決まっているお子さんの場合は、その手の教材にプラスアルファしての、細部のチェックが重点指導になります。)
魁は次のように考えているので、その旨お応えしました。
- その学年1位のお子さん(Zちゃんとします)と、息子さんは(魁はZちゃんに会ったことがないので断定できませんが)持っている特性が異なるはずで、同じ教材を使ってそのまま伸びるに違いない!というのはリスクが高い。
⇒これは恐らく魁でなくても感じるのではないでしょうか。教育サービス業界が(まともな発想の会社であれば)お子さんを伸ばすときに軸としている考えに「教材”を”教えるのではなく教材”で”教える」というものがあります。
サイコーのテキストがあって、それを売りつければ成績バンバン上がるんじゃわ!というのは幻想です。テキストの適当不適当こそあれ、カンペキなテキストがあるわけではなく、そこに「まともに判断できる、教える人」が介在することで効果が出ます。
- (そのZちゃんが本音を言ってくれていると信じたうえで、)Zちゃんが自分の点数がとれている原因が、教材〇〇によるものだとは限らない。
⇒教育サービスを医学に例えるのはおこがましいのですが、これは「自覚症状」と「実際の患部」の関係に似ています。
頭が痛くなって、かかりつけのお医者を受診した際に、恐らくお医者さんは
「どこが痛い」「どう痛い」「いつから痛い」「心当たりは」
と様々な質問を患者さんに行って、原因を推定していきます。そのうえで有効な処置や処方をしてくれるはずです。
「ルパン三世」に登場する流れのガンマン、次元大介の早撃ちのように、出合頭の0.3秒で、
「頭が痛い??確実にインフルエンザだね!!!」
と即断されることは、まずないでしょう。
これはひっくり返すと「健康」にも言えます。
「このサプリを飲んでいるから私は健康!!」「ラジオ体操しているから元気!!」
という経験談を聞きます。ひょっとして正しいのかもしれません。
が、ブラック企業に勤めていて休みがなく、超不健康な生活で、睡眠不足で、偏った食生活を長年続けているけど、「サプリ」と「ラジオ体操」で健康なんです!というのは考えづらいですよね。
同じことで、教材〇〇がそのZちゃんの好成績の原因と断定して、それだけに取り組ませるのは早計だと感じました。
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そして、ひょっとするとZちゃん自身も、何か成績の上がる習慣や教材をコッソリ隠しているわけではないのではないか、と魁は考えます。気づいていないのではないかと。
大の大人であっても、自分の長所短所を客観的に自覚+把握していることは少ないです。
「おれはいい上司だ!ゲヒヒ!!」
と豪語している管理職や経営者の行いが、部下たちにとってはそれはもう無茶苦茶であることは多々ありますし、その部下さんの悩みを聞くことがあります。
自分の状態をつかむことはとても難しい。
ましてやお子さんが、「ボクの、私の長所はここで、短所はここで、その根拠は・・・」など、つかんでいるようなことはありうるのでしょうか??
お子さんを指導するにあたって、経験の浅い指導者が言いがちな”あまい”一言に、
「(ここまでの説明)わかった?」
というのがあります。
10人中9人は、反射的に「わかった」と答えてくるので、魁は使いません。(使うとして、別に判断するポイントがあります。)
お子さんの中では、
- これまでの教育環境の中で「わかりません」と言って来なかったので、「わかった」と相槌的に口にしてしまう。
- せっかく説明してくれたのに、「わからない」とは言えない。悪い気がする。
- 「わからない」と返答すると、説明時間が延びるので、面倒くさい。(早くおうち帰りたい)
など、「わかった」と言ってしまう条件がそろっています。
実は、一番ありうるケースは、
「その場ではわかった気がする!」
です。その場では、完全に理解しているし、ものにできたと確信しています。
けれど、運転教本を1回熟読したら安全運転ができるわけではないように、もちろん帰宅したら「あれ?なんだっけ??」「何か習ったような気がする」と記憶が劣化していきます。
それほど、お子さんの「自分の状態に対する自覚」は悪意なくあいまいであることが多いです。
- 「答えの順番を覚えること」の恐怖!「定期テスト良い子ちゃん」に待っている苦労・・・
⇒最後にそのお母さんにお伝えしたのは、魁がそのお子さんを指導していて感じる実感に基づいてのことでした。
「お子さんを指導していて強く感じるのは、発想が大変柔軟である点です。これは、代えがたい素質です」
「教材〇〇をやり込む!のは、一定の問題についての一定の答えを”暗記”するのと大差ありません。定期テストの過去問題を丸々コピーしてそのままテスト前に解かせてハイおしまい!の塾も同じことをしています」
「そうすると、答えに至る理屈が育たず、”(1)はア。(2)は下方置換。(3)は・・・”といったように答えの順番だけをボンヤーリ覚えることになります」
「お子さんの素質を殺してしまうリスクがありますし、仮に定期テストで高得点が出たとして、(もちろんそのために毎回指導にお伺いしています)診断テストや入試のような実力が問われるテストで歯が立たなない”定期テスト良い子ちゃん”に向かっていきます」
(定期テスト良い子ちゃんは、受験期に応用が利きづらく”詰み”にはまることがあるので、要注意と思って指導しています)
「そのままリクエストをお引き受けすることもできますが、このリスクの可能性はハッキリお伝えします。後出しで”あの時実は・・・”と言い出すのだけは最悪なので」
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カンペキ・絶対・確実に効率よく!という勉強法は、あるようで実はお手ごろには手に入りません。
ただし、「こうすると下がる」という失敗例から、その逆を目指させて「負けない勉強法」を取ることで「成功」に近づけることが出来ます。