突然ですが、
塾側が、お客さん側が意識しない範囲で結構気合を入れている業務の一つに
「立ち番」
があります。
通塾時間帯のラッシュ時に、お子さんたちに声をかけつつ、自転車整理、送迎される保護者さんにご挨拶といった一連のアレです。
授業開始前というと、人の出入りや電話対応が殺到しやすいため、雰囲気だけでもかなりあわただしいです。
実際、通塾してきたお子さんたちが講師室に質問に来ることもありますし、
「センセー聞いてよ~~~、今日お母さんガー」
と愚痴を言いに来たり、遅刻欠席の電話が鳴ったり、なぜかそのタイミングで
「ご相談が・・・」
と電話をかけて来られるご家庭も。
事務専門のスタッフがいればスムーズでしょうが、そこまでの人員がいない塾も多いです。
「事務はもう雇わない!これからは社員(兼講師)が事務一切もやれ!理由??経費が掛かるからだよ!!ヨユーだろ!!」
と現場が全く見えていないバブル思考の経営者もいます。
(当人の中でだけ、おれはヨユーでこなしていた!という記憶が出来上がってしまっている)
学生バイト講師さんが出勤してくれば、その日の業務連絡事項を伝えることが必要です。今日は何となく授業だけということはないです。
つい授業前に追加でコピーが必要になるかもしれません。
最悪なのは、指導に無計画で臨み、授業中に
「ちょっと待ってて、コピーしてくる」
とお子さんを放置して離席することですので、事前に気づくだけOK。
*
さて、その忙しい時間帯に、「立ち番」をすることにはいくつかの効果があります。
「自転車を整理して見栄えをよくする」とか「お子さん(お客さん)を出迎える態勢をとる」
というのが基本ですが、最も塾にとって意味が大きいのが、
「塾のスタッフの人間性から塾の気質を周囲に示すことができる」
ということです。
それだけ見られているということでもあります。
魁が新卒でいた大手スパルタ塾では、スタッフにもスパルタであり、「立ち番」の重要性について研修の時間をとっていました。
「そこまでしなくても~~~」
と読者さんに塾業界のヒトがいたら笑うかもしれませんが、立ち番のケーススタディや実演のロールプレイング(予行演習+ダメ出し)を、管理職やエリア長に研修を受けました。
その際に穴埋め形式の研修の「確認テスト」が行われました。
印象に残っているのは、
「立ち番は、( )の顔としてその場に立っていることを意識せよ」
という問題でした。
魁は( )に”校舎(自分の所属先)”と書いたのですが、不正解。
( )には”会社”と書くのが正解でした。
当時は内心「大げさな」と反発していましたが、
もし、保護者さんや通行人の立場で想像すると、塾の前を通った際に、自転車が整然としており、スタッフがにこやかにあいさつしており、人流がスムーズであれば、
「あ、あの塾まともだな。いつかうちの子も・・・」
と印象がつきます。もし居住地がその校舎の近くでなくとも、自宅近くに別の校舎があれば、
「あの塾なら任せてもいいかも知れない」
と判断するきっかけには十分になりえます。確かに小さな積み重ねですが。
どんな塾なのか?というイメージが勝手に出来上がっていきます。
良ければより良い方向に!!
だらしなければひたすら悪い方向に。。。
もしかして、職場で「あそこは挨拶シッカリしているよ」とプラスの話題になるかも知れません。
(自転車が散乱していたり、お子さんとスタッフがだらしなくしていたら逆効果です)
立ち番を目にする方が、自校舎の商圏の人とは限らない。問い合わせを受ける前から良いイメージを醸成できる!という点で、時を経て、確かに
「立ち番は会社の顔である」
に深く納得するものです。
小さな積み重ねですが、そこにスキを与えず、プラスを生じさせることを徹底していたわけです。
研修があるくらいなので、マニュアル化(製本)されていたはずです。
*Pay!Pay!!Pay!!!
だからこそ、社員こそ、校長こそ、立ち番に立て!忙しさを理由にするな!バイト講師にやらせるな!
と言われました。
その現場の中核たる人物が立つことが、一番「顔」になるからです。
一方バイトさん達には、立ち番の当番が義務付けられており、その回数に応じて、学生さんには十分な
「立ち番手当」
が別途支給されていました。
社員からツベコベ拘束されて「やりがい搾取」をされるより、すんなり(学生さんなりに照れながら)立ち番を行っていました。
ここがこの大手塾の優れたところで、よくありがちなジュクの発想だと、
「立ち番は業務のうちだ!もともとのバイト代に入ってるんだよ!」
と押し切ろうとします。
引き算の考え方です。
学生さんとスタッフとしての契約を結ぶ際に、そこら辺の話を流しながら、サインをさせればしめたものでしょう。
理屈上は押し通せるかもしれませんが、バイトさんが内心、
「何かやるだけ損してる」
と感じるのは明白です。
業界の中には、
「私が現場にいたときは、バイト全員で生徒を最後まで見送りさせていましたよ、あっはっは!」
と満足げに笑い、無償奉仕をさせた過去に悦に入っているペラい者もおりました。
学生さんたちも、そんなバイト先に応募してしまってガッカリしていたことでしょう。
ペラいのとは逆に、その大手塾では、講師としての手当とは別に、はっきりと別途の支給したことで、非常勤のスタッフにも立ち番への職務意識が生まれていました。
足し算の考え方です。
社長を始め、役員までが学生講師としてスタートして会社を築き上げたので、現場の心理を巧みに理解していたのかもしれません。
*
社員の魁は、当時新卒2~3年目の頃で、とにかく校舎の印象をさらに良くできれば!という気合の下、
通行人や他塾生(と思しきお子さん)にもデカい声であいさつしつつ、自転車整理など行っていました。
ガムシャラにやっていたので、今思うと音量がうるさかったですが、経験値がない自分にできる貢献の一つだと感じていました。(また、そういう気持ちを引き立たせる上司でした)
因果関係は怪しいですが、その校舎は堅調に各種の数字を伸ばして、数百人(くわしくはヒ・ミ・ツ)の塾生ノルマを達成しました。
証明はできません。
ただし、「あいさつされてマイナスに感じる人はいない」というのは当時も今も普遍だと思います。
(ジュク業界には、あいさつした瞬間にキエー!!となってしまうような感情コントロールができない珍材もいましたが)
という、「立ち番」の持つ演出効果が産む経済効果(?)についてでした。
それでも、立ち番だけが良ければ、塾の評判が高まるというわけではございません。
それでは、今日も指導に行ってまいります。(今は立ち番がない業態です)